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岸田総理「看護師・介護士・保育士の賃金アップ、2022年2月実施へ」具体的な引上げ金額や方針について|業界ニュース

  • 時事・ニュース

目次

2021年10月4日に岸田文雄内閣がスタート――。
岸田内閣は国民の生活を守り、国民の所得を増やすために5つの政策を掲げており、そのなかでも「看護師・介護士・保育士の賃金アップ」に関する施策が注目されています。

これらの職業は仕事に対して給料が見合っていないと言われているため、実際に働かれている方の期待や関心の高い政策でしょう。一方、「どれくらい賃金があがるのか?」「財源はどこ?」といった声があるのも実情です。

バイトルPROマガジンでは本政策について2021年12月23日時点で明らかになっていることを整理しました。



賃金アップのため、公的価格評価検討委員会を設置

岸田総理は、看護師・介護士・幼稚園教諭・保育士などの職種において、賃金が公的に決まるにも関わらず、仕事内容に比べて報酬が十分でないことを問題視しています。

そのような方々の収入を思い切って増やすため、「公的価格評価検討委員会」が設置され、公的価格の抜本的見直しが進められています。

公的価格評価検討委員会とは、看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やすため、公的価格の在り方を検討する目的で設置されました。

[ 公的価格とは ]

看護・介護・保育の各分野ではそれぞれ公定価格(公的価格)が国によって決められています。
看護(医療)なら診療報酬、介護なら介護報酬を、各事業者は公的医療保険介護保険から受け取っています。保育についても、幼児教育・保育の無償化により、保育料の多くは公費で負担され、事業者は公費から報酬を得ています。
そのため事業者がサービス価格を決めることができず、総報酬が上がらなければ人件費を上げるのも難しいという仕組みなのです。

賃金アップが検討されているの職種の方々の給与は、現時点でどのくらいなのでしょうか?令和2年賃金構造基本統計調査によると、今回賃金改善の対象として挙げられた職種の給与は以下のとおりです。

職種 給与
全体平均 307,700円
介護支援専門員 269,100円
介護職員 239,800円
訪問介護従事者 245,800円
看護師 309,100円
准看護師 269,000円
看護助手 210,100円
保育士 245,800円
幼稚園教員,保育教諭 251,200円
参考:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

全体平均と比較して給与が高いのは看護師のみとなっており、その他の職種は平均を下回っています。なかでも介護職員や保育士は平均より6万円以上低く、給与に対する課題感は大きいと考えられます。

しかし、上述した「公的価格」の解説で取り上げたとおり、事業者の総報酬が上がらない限り、事業者が雇用者の給与を上げたいと思ってもなかなか上げられない側面があります。

仕事の大変さに比べて給与水準が低い状況を受け、岸田総理は「これらの職種の給与は国で給与を決めることができるので、率先して給与を引き上げることを考えたらどうか、それをきっかけに民間の給与の引き上げにもつながるのではないか」と発言しています。

引用:自民党「岸田文雄新総裁記者会見(2021.9.29)」/内閣官房「公的価格評価検討委員会」



岸田内閣の基本方針とは?

公的価格の抜本的見直しを検討している岸田内閣ですが、他にはどのような政策を掲げているのでしょうか?5つの政策を簡単に紹介いたします。

[ 5つの政策 ]
  • 新型コロナウイルス対策:これまでの対応の分析と危機管理体制の強化
  • 新しい資本主義の実現:貧富の差による分断を防ぐため、経済を成長させつつ分配を行う好循環をつくりだす
  • 国民を守り抜く、外交・安全保障:日本として解決すべきことを解決し、守り抜くべきことを守り抜く(北朝鮮、北方領土問題など)
  • 危機管理の徹底:大規模な自然災害やテロなどの危機が生じたとき、すぐに柔軟に行動できるようにする
  • 東日本大震災からの復興、国土強靱化:被災者に寄り添い、支援と復興に全力を尽くす

これら5つの政策の中の2つ目「新しい資本主義の実現」の中で、岸田総理は「公的価格のあり方の抜本的見直しを行う」と発言しています。

参考:自民党「岸田内閣 基本方針」/首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見(2021.10.4」



現時点での本政策の詳細

今回の賃金アップの施策はいつ頃から実施され、どのくらい給与が上がるのでしょうか?また、給与を上げるための財源はどのように確保されるのでしょうか?


賃金引上げ価格、時期について

2021年12月21日、公的価格評価検討委員会から賃金引き上げに関する中間整理が発表されました。

中間整理では、看護師・介護士・保育士・幼稚園教諭として働く方々の給与を2022年2月から全職種一斉に引き上げると明記されています。賃金のさらなる引き上げを継続することも検討されていますが、本当に継続されるのか、最終的にいくらまで引き上げられるのかについては明らかになっていません。

各職種の2022年2月からの賃金引上げ額は以下のとおりです。

職種 引き上げ額
介護・障害福祉職員 月額9000円(収入の3%程度)
保育士・幼稚園教諭 月額9000円(収入の3%程度)
看護師(一部) 月額4000円(収入の1%程度)

上記の保育士・幼稚園教諭には、一般にイメージする保育士・幼稚園教諭だけでなく同様の職務で働く方々も含まれています。具体的には、認定こども園、地域型保育事業の公定価格の対象の事業所で働く方々や、放課後児童クラブの職員、児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設、児童心理治療施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム、ファミリーホームの職員、及び公定価格の対象でない私学助成を受ける幼稚園の教諭なども今回の賃金引上げの対象とされています。

一方で看護師については、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する」看護師のみが賃金引上げの対象とされています。

「地域でコロナ感染症医療など一定の役割を担う医療機関」とは、「一定の救急医療を担う医療機関(救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200 台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関)」と定義されています。つまり一般的なクリニックや小規模な病院で働く看護師は今回の賃金引き上げの対象外なのです。

なお、上記の医療機関に従事する看護補助者・理学療法士・作業療法士などの看護師以外の医療従事者も対象とされており、看護師同様の賃金の引上げが予定されています。

2021年12月21日に公的価格評価検討委員会から発表された2022年2月から9月まで1%程度(月額4000円)の賃金引き上げに加えて、岸田総理は2021年12月21日の臨時国会閉幕後の記者会見で、今回の賃金引き上げの対象となる看護師については、2022年10月から賃金を3%程度(9000円程度)引き上げると話しました。

看護師全体へ賃金引上げを拡大するのか、他の職種も対象に含めるのかといった賃金引上げ対象の検討や2022年10月以降の対応の具体については令和4年度予算編成過程で検討される見通しです。

参考:内閣官房「公的価格評価検討委員会 中間整理」/首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見(2021.12.21)」


賃金引き上げの財源先について

岸田内閣は「公的価格の在り方の抜本的な見直し」を最優先課題としました。そのため、本来であれば早急な実行が難しい賃金引上げを経済政策に組み込むことで、2022年2月から実施できるようにしたのです。

2022年2月から2022年9月分までの賃金引上げは急遽発生した予算のため、「公費」(2021年度補正予算)の2600億円が計上される予定です。2022年10月以降についても、「公費」(補正予算ではなく、当初の予算)とし、安定的な財源が確保される見通しです。

参考:財務省「令和3年度補正予算」


今後の方針について

賃金引き上げの時期や金額は決まったものの、賃金が引き上げられる人たちへの配分方法などは決まっていません。賃金引き上げにあたり、2つの課題があります。

1つ目の課題として、今回急遽決定した賃金引き上げの財源は補正予算のため、いわば応急措置でしかないという課題があります。継続的な賃金引き上げを実現するための安定した財源はどこから賄っていくのでしょうか。

今回の賃金引き上げについて、24の関係団体から「公的医療保険制度の医療報酬や介護報酬そのものを改定するべきだ」「賃金引き上げを一時的なものにならないにしてほしい」と求める意見書が政府に提出されています。

しかし、医療保険制度や介護保険には、現場で働く看護師、介護士の処遇改善を直接促す仕組みがありません。

そのため今後は、公的価格そのものを見直すことになりました。国民の負担に回すのではなく、 既存予算の見直しや高齢化に伴って増加する医療・介護費の中での分配のあり方などを含め、幅広く検討を行う方針を示しています。

看護師、介護士の処遇改善では賃金引き上げによる効果、影響を持続的に発揮できるかが課題となりそうです。

2つ目の課題として挙げられるのが、一部の看護師や職種での限定にせず、医療・介護・保育の現場に携わる全ての職種を(賃金引上げの)対象にするという点です。現時点では、対象はあくまで看護師(一部)・介護士・保育士・幼稚園教諭とされています。

同じ職場で働いているのに、限定された職種の人にしか賃金引上げがなされないことに、現場からは戸惑いや不満の声が上がることが予想されます。

この課題に対し、政府は「多職種へ配分する柔軟な運用も認めていく考え」を示しています。

賃金を引き上げるだけでなく、デジタルやICT技術、ロボットの活用により、現場で働く方々の負担軽減と業務の効率化の課題についても、2022年夏までに方向性を整理する方針が示されました。
今後の方針などは、公的価格評価検討委員会などの議論にどう反映されるのか注目です。

介護士の処遇改善制度についてはこちらの記事も併せてご覧ください。
介護職は給与が増え続けている!介護職員処遇改善加算を解説

参考:内閣官房「公的価格評価検討委員会 中間整理」/「公的価格に関する意見書」/厚生労働省「介護職員処遇改善加算のご案内」



編集部コメント

今回賃金改善の対象とされている、看護師・介護士・保育士・幼稚園教諭などはかねてより人手不足や低賃金が問題となっている職種です。これらの職種の方々の給与が上がれば、その仕事に就きたいと感じる人や働き続けたいと感じる人が増えるのではないでしょうか。

さらに、「賃金を抜本的に見直し、改善する」という動きは、その業界で働く人たちだけでなく世の中にも良い影響をもたらすのではないでしょうか。

看護師、介護士・保育士・幼稚園教諭などの皆さまの仕事探しを応援するバイトルPROとしても、給与・所得の底上げが実現されることを期待しています。

バイトルPROマガジンではこの政策について引き続き注目し、新たな動向があればみなさまにお知らせしていきます。


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