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看護師ができる特定行為とは?特定行為研修の概要や特定看護師になるメリットを解説!

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目次

団塊の世代が後期高齢者となる2025年を控え、さらなる在宅医療の推進が求められています。そのような背景から法改正が行われ、一定の基準を満たした看護師は「特定行為」と呼ばれる、従来は医師しかできなかった医療行為を行うことが可能になりました。

この記事では看護師ができる「特定行為」の内容や、どうすれば特定行為ができるようになるのか、そしてそのメリットはどこにあるのかを解説していきます。


看護師ができるようになった特定行為とは?

特定行為とは特定行為研修を受講し、専門的な知識・技術を身につけた看護師だけが、医師・歯科医師の手順書をもとに実践できる医療行為です。

迅速かつ的確な医療の提供とチーム医療の推進を目的として、2015年10月に看護師の特定行為研修制度が設けられました。ここでは看護師できる特定行為の種類と、特定行為を行うために必要な手順書について解説します。


特定行為の種類

特定行為は大きく21区分に分けられ、さらに38の行為に分類されています。具体的な特定行為の一部をご紹介します。

  • 人工呼吸器の設定や酸素投与量の調整
  • ドレーンの吸引圧の調整や抜去
  • 胃ろう・腸ろう・膀胱ろうカテーテルや、気管カニューレの交換
  • 直接動脈穿刺法による採血や橈骨動脈ラインの確保
  • 抗生剤の臨時投与
  • インスリン投与量の変更・中止の決定

38の特定行為の全ては以下のページからご覧いただけます。
厚生労働省「特定行為とは」


手順書とは

手順書とは、看護師が特定行為を実践するために、医師・歯科医師が作成する事前指示書です。手順書には、以下の6項目が記載されています。

  • 看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲
  • 診療の補助の内容
  • 当該手順書に係る特定行為の対象となる患者
  • 特定行為を行うときに確認すべき事項
  • 医療の安全を確保するために医師又は歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制
  • 特定行為を行った後の医師又は歯科医師に対する報告の方法

医師・歯科医師は「特定行為を受ける患者さんの名前」と、「特定行為を行う看護師の名前」を手順書に必ず記載しなければなりません。また、手順書には医師・歯科医師の判断で、患者さん一人ひとりに具体的な指示・行為を追加することができるため、個別性がある医療行為の実践が可能です。

手順書のイメージ:直接動脈穿刺による採血のケース

事項 具体的な内容
当該手順書に係る特定行為の対象となる患者 呼吸状態の変化に伴い迅速な対応が必要になりうる患者
看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲 以下のいずれもが当てはまる場合
・呼吸状態の悪化が認められる(SpO2 、呼吸回数、血圧、脈拍等)
・意識レベルの低下(GCS○点以下又は JCS○桁以上)が認められる
診療の補助の内容 病状の範囲に合致する場合は、直接動脈穿刺による採血を実施
特定行為を行うときに確認すべき事項 穿刺部位の拍動がしっかり触れ、血腫がない
医療の安全を確保するために医師又は歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制 ①平日日勤帯 担当医師又は歯科医師に連絡する
②休日・夜勤帯 当直医師又は歯科医師に連絡する
特定行為を行った後の医師又は歯科医師に対する報告の方法 手順書による指示を行った医師又は歯科医師に採血の結果と呼吸状態を報告する(結果が出たら速やかに報告)

参考:厚生労働省「手順書とは」/「これからの医療を支える看護師の特定行為研修制度」


特定行為ができる看護師になるには?

看護師が特定行為を行うには、「特定行為研修」の受講が必要です。厚生労働省の指定研修機関で研修を修了すると、手順書に基づいた特定行為が実践できるようになります。

特定行為研修は、特定行為を行う際に必要とされる、実践的な理解力・思考力・技術の向上を目的に行われます。この研修は「アセスメントや判断力を強化するだけでなく、治療を理解し、安全に医療を提供する能力を身に付けた看護師の育成が必要だ」という背景から生まれました。

ここでは、特定行為研修の学習内容や受験資格、費用などを解説します。


特定行為研修の学習内容

特定行為研修は、全てに共通して学ぶ「共通科目」と、特定行為区分ごとに学ぶ「区分別科目」に分かれていて、その両方を受講する必要があります。

それぞれの研修内容や科目は、以下のとおりです。

共通科目 区分別科目
研修内容 全ての特定行為区分に共通する、基本的な知識や技術を学ぶ 特定行為区分ごとに異なる、専門的な知識や技術を学ぶ
科目 臨床病態生理学
臨床推論
フィジカルアセスメント
臨床薬理学
疾病・臨床病態概論
医療安全学/特定行為実践
呼吸器・循環器・ドレーン管理・カテーテル管理・薬剤投与関連など、特定行為区分ごとに異なる科目
学習方法 講義(一部eラーニング)
演習
講義
区分に含まれる行為ごとに5~10症例の臨地実習
研修時間 250時間 5~34時間 ※区分ごとに異なる

参考:厚生労働省「これからの医療を支える看護師の特定行為研修制度」


受験資格

特定行為研修の受講資格は、指定研修機関によって異なります。

指定研修機関で受講するために最低限必要な受験資格は、看護師免許です。そのほか「3~5年以上の実務経験」や「上司・施設長の推薦書の提出」を必要とする指定研修機関もあります。指定研修機関の受講要項をよく確認してから申し込みをしましょう。


受講場所

特定行為研修は厚生労働大臣が指定する、指定研修機関で行われます。指定研修機関は2021年年2月時点で、全国に272機関あります。

機関数は都道府県別でみると東京・神奈川が多く、施設の種類別でみると病院(診療所を含む)が約60%と最も多いです。

看護師の特定行為研修 ポータルサイトでは、特定行為区分や都道府県を指定して、研修機関を探すことができます。ぜひ活用してみてくださいね。

参考:厚生労働省「特定行為研修を行う指定研修機関等の状況」


研修受講にかかる期間・費用

特定行為研修受講にはどれくらいの期間や費用がかかるのでしょう。それぞれ、解説していきます。

期間

研修受講にかかる期間は、指定医療機関や研修区分によって異なります。研修時間は共通科目で250時間、区分別科目で5~34時間と定められており、この科目を受講するのに必要な期間はおよそ半年~2年となっています。

費用

研修にかかる受講料も、選択する指定研修機関や研修区分によって異なります。費用の一例として日本看護協会が主催する特定行為研修では、452,000円~1,032,000円の受講料がかかります。

特定行為研修は、厚生労働省の教育に関する助成金の対象となっていて、以下の2つの制度を利用できる場合があります。

また、医療機関によっては資格手当等の補助を用意しているところもあるようです。特定行為研修の受講費用に不安がある方は、助成金や手当の利用も検討してみてください。

参考:公益社団法人 日本看護協会「特定行為研修 よくある質問」


領域別パッケージ研修とは

特定行為研修は、特定行為区分ごとに受講するように定められています。しかし、実際の患者さんには複合的な医療行為が必要な場面があり、1つの区分の受講だけでは不十分なケースがあります。

また、複数の特定行為研修を受講するには、研修修了までに時間や費用がかかりすぎることも課題でした。

そこで、2019年4月に「領域別パッケージ研修」とよばれる、新たな研修スタイルが生まれました。

領域別パッケージ研修とは、各領域でー般的な患者さんを想定し、実施頻度が高いと考えられる特定行為をまとめた研修です。特定行為区分ごとに研修を受けるのと比較して、時間数と費用を抑えて特定行為研修を修了することができます。

現在、パッケージ研修には6つの領域があります。

  • 在宅・慢性期領域
  • 外科術後病棟管理領域
  • 術中麻酔管理領域
  • 救急領域
  • 外科系基本領域
  • 集中治療領域

以下は在宅・慢性期領域で、領域別パッケージ研修を受講する場合の一例です。

特定行為区分 時間数
(区分ごと)
時間数
(パッケージ)
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 8 8
ろう孔管理関連 22 16
創傷管理関連 34 26
栄養及び水分管理に係る
薬剤投与関連
16 11
合計 80時間 61時間

共通科目の250時間も含めると、特定行為区分ごとに受講すれば330時間かかる研修が、パッケージ研修では311時間まで短縮できます。


特定看護師と専門看護師・認定看護師の違い

特定行為ができる看護師を「特定看護師」と呼ぶことがあります。そして特定看護師と似た呼び方の看護師の資格に「専門看護師」と「認定看護師」があります。

しかし専門看護師と認定看護師は資格の名称であるのに対し、特定看護師は資格の名称ではなく、特定行為研修を修了した看護師をさす「通称」です。

業務内容にも大きな違いがあります。

特定看護師 医師しか出来なかった特定行為を、医師の作成する手順書に基づいて行う。
専門看護師 がん・精神・地域・老人・小児看護など13の専門看護分野について、専門的な看護の実践や、関係者との調整、技術向上のための研究を行う。
認定看護師 救急看護・緩和ケア・訪問看護・感染管理などの21の分野について、レベルの高い看護の実践や、看護職への指導・相談の役割を担う。

専門看護師と認定看護師は、「看護ケアの向上を目的」とした資格です。一方、特定看護師は高度な専門知識や技術・判断力をもとに、医師を待たずに手順書に準じた特定行為を実践できます。


特定看護師になるメリット

特定看護師になると、どのようなメリットがあるのでしょう。ここでは2つのポイントにしぼって、解説していきます。


タイムリーにケアできる

特定看護師とそうでない看護師では、日常的業務に差はありません。しかし、患者さんの状態が不安定になったときや、高度な医療処置が必要な場面では、業務に大きな差がうまれます。

一般的な看護師は、患者さんの状態が変化するとその都度医師に報告し、指示を仰ぐ必要があります。つまり、報告→指示→実施の過程でタイムラグが生じるのです。

しかし、特定看護師であれば医師が事前に作成した手順書に従う範囲内で、専門的な医療行為をタイムリーに提供できます。特に在宅療養では、タイムリーなケアが患者さんの病状の悪化を防ぎ、それによって入院を回避できる可能性があります。

さらに、患者さんや家族の負担の軽減にもつながるでしょう。高齢者が増加し在宅医療が増えるなかで、特定看護師の活躍に期待が集まっています。


活躍できる職場が広がる

特定看護師は手順書に従う必要はあるものの、看護師自身の判断で医療行為を実施できます。そのため、急性期領域や在宅医療など、患者さんの状態に合わせた迅速なケア・処置が求められる分野で活躍の場が広がっています。

特定行為について専門性を深めることは、自身の看護師としてのスキルアップだけでなく、将来的なキャリアアップにもつながります。現在、特定看護師のニーズは増えてきているため、転職に有利となることが期待できるでしょう。


まとめ

看護師の特定行為研修制度は、看護師がより専門的で高度な医療を、リアルタイムに患者さんに実践するために作られた制度です。

2015年に制度が導入され、厚生労働省は2025年に向けて10万人以上を養成することを目標としていました。しかし、2021年3月時点での研修の修了者数は4,393名で目標の4%となっています。

特定行為は2019年の看護師国家試験でも出題され、看護師の常識となっており、潜在的なニーズも高いと推察されますが、現場の認識は不十分な可能性があります。

特定行為研修は看護師としてのスキルを高めるだけでなく、キャリアアップや転職にも有利だと言われています。研修には時間もお金もかかるため、将来を見据えて計画的に特定行為研修を受講することを検討してはいかがでしょうか。


ライター 小田あかり
大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器の最前線で勤務。現在も看護師として働きながら、ライターとしても精力的に活動中。保健師、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士の資格も持つ。


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